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温泉だけじゃない下呂に出会う場所。川辺で開く「下呂軽トラ市」

下呂軽トラ市の会場を背景に立つ船坂さん

岐阜県にある下呂温泉は、兵庫県の有馬温泉、群馬県の草津温泉と並ぶ「日本三名泉のひとつ」です。その下呂温泉のまちなかを流れる飛騨川の河川敷に、奇数月の第4日曜日に、軽トラックやキッチンカーが集まります。飛騨牛を使った料理や、地元の野菜を使ったスイーツが並び、買い物の合間には、川沿いに湧く足湯に浸かり、川風に吹かれてのんびり。旅の途中で立ち寄った観光客も、地元で休みの日のおでかけ目当ての人も、思い思いに過ごせる場所、それが下呂軽トラ市です。

軽トラ市は、軽トラックの荷台などを店にして、食料品、衣類、雑貨などの商品を陳列し販売する臨時の市です。現在全国150か所以上で開催されており、ここ下呂には温泉街ならではの姿がありました。市を立ち上げた舩坂誠司さんと、出店者を訪ねました。

飛騨川沿いに並ぶ軽トラックとキッチンカー

温泉のまちに、もうひとつの楽しみを

下呂軽トラ市が初めて開かれたのは、2024年5月26日。発起人の舩坂さんには、以前から気にかかっていたことがありました。

「下呂は観光地ですが、同時に中山間地でもあります。今後人口が減っていく中で、地域を元気にするために何かできないかと考えていました」。

その手がかりになったのが軽トラ市でした。下呂市は、軽トラ市が全国に広がるのを後押ししたスズキ株式会社の故・鈴木修氏の生誕地でもあります。そこに縁を感じ、舩坂さんは愛知県新城市で開催されている「しんしろ軽トラ市 のんほいルロット」を訪ねました。そこで体感した出店者の熱気に触れ、何度も足を運ぶことになりました。「訪れている人たちがみんな楽しそうなのが、なによりいいと思いました。下呂でもやってみたい!と、お手伝いをさせていただくようになったんです」。

同じく岐阜県で開催されている、加子母マルシェ軽トラ市でも手伝いながら学び、運営者に協力を依頼。地元・下呂の事業者に声を掛け、自動車販売会社なども加わり、ついに下呂での開催にこぎつけました。
会場に選んだのは、しらさぎ緑地公園。下呂駅から温泉街をむすぶ下呂大橋から見える場所です。一般に軽トラ市といえば商店街に車を並べることが多いのですが、下呂の温泉街には車を乗り入れしにくいという事情があり、人が集まりやすく、川と山を望む公園を舞台にしました。

しらさぎ緑地公園で開かれる下呂軽トラ市
キッチンカーで買い物を楽しむ来場者

いざ始めてみると、予想以上に観光客が足を止めてくれることがわかりました。軽トラ市の存在を知らなくても、音楽や人の声に誘われふらりと入ってくる人も。これは観光地ならではの特徴でした。下呂温泉は、中部地方にある大学生たちが訪れるまちとしても認知されていて、公園にある足湯では、若い旅行客の姿も多く見られます。

観光客と地元客が交わる場に

会場に並ぶのは、飛騨牛を使った料理や飛騨川で獲れた鮎の塩焼き、高山のトウモロコシを生かしたピザなど、地元ならではのおいしいもの。一方、地元の農家が持ち込む野菜は、早い時間に地元の人たちが買っていきます。同じ会場でも、訪れる目的や買うものが少しずつ違うため、舩坂さんはその両方が楽しめる市を育てたいと考えています。

「たまたま温泉に入りに来た方が、次は軽トラ市を目当てに下呂を訪れてくださることもあります。それはうれしいですね」。毎回行なっている抽選会も好評で、卒業旅行中の大学生たちが見事飛騨牛を引き当て、大盛り上がりしたこともありました。

会場で販売される鮎の塩焼き

また会場は、地元の団体が、さまざまな催しを行う場としても活用しています。太鼓の演奏や子どもたちのダンスが始まると、その音に誘われて、温泉街から人が集まります。出演者にとっては、めったにない多くの人の前で披露する機会です。この日は、飛騨萩原御前太鼓保存会の子ども部が演奏を披露。力強い太鼓を鳴らし、日頃の練習の成果を発揮していました。

飛騨萩原御前太鼓を演奏する子どもたち

3年目を迎えて、舩坂さんが大切にするのは、「こつこつ続けること」。「100回を目指そう」を合言葉に、仲間たちとブラッシュアップを続けています。市は定期的に開かれてこそ、地元の人にはおなじみの楽しみとなり、旅人への魅力となると考えています。

軽自動車で運べる!下呂生まれのストーブ&サウナ

会場にひときわユニークな一画が。黒いテントの中ではストーブが焚かれ、ホカホカのサウナができあがっていました。ペレットストーブの販売を行う「PELLEK」さんです。ペレットストーブとは、木を細かく砕いて圧縮したペレットを燃料に使い、電源なしで火を起こせるというもので、このペレックは熊﨑和典さんの父が13年かけて開発しました。災害時に使えるものを作りたいというのが開発の動機でした。

ペレットストーブを使ったテントサウナ

実際に、火が燃える様子を目の前で見られるのは魅力的です。ペレットを入れて火をつけ、湯を沸かし、料理をする。ピザやバーベキュー、燻製もお手の物です。来場者は炎の暖かさを感じながら、気になることをその場で尋ねます。ストーブとサウナセットは、軽自動車に積み込むことができ、下呂軽トラ市はもちろん、全国のさまざまな展示会へ出かけては、普及活動に取り組んでいます。

「やっぱり実際に体感してもらうのが一番です。近頃は災害も増えて、電気を使わなくても暖を取れ、お湯を沸かすことができるこのストーブのメリットを、より強く感じるようになりました。近頃はサウナやキャンプに興味のある人からも注目されています」と熊﨑さん。

軽自動車とテントサウナの前に立つPELLEKの出店者

全国に広がる、軽トラ市の輪

下呂軽トラ市は、他地域の軽トラ市に通って運営を学び、各地の仲間に支えられて始まりました。舩坂さんは「岐阜県軽トラ市連合会」を立ち上げ、岐阜県内の軽トラ市をつなぐ活動にも取り組んでいます。「下呂だけでなく、いろんな地域が一緒に盛り上がることが大事です」と話します。互いの催しに出店し合い、それぞれの土地の品を紹介することもあります。

下呂軽トラ市の飲食店に集まる来場者

横のつながりを生かし、災害を受けた地域の応援も続けています。2025年に能登輪島で開かれた全国軽トラ市にも駆けつけ、下呂でも能登の特産品の販売を行っています。取材当日は令和8年熊本地震の復興支援として、熊本の特産品販売コーナーを設けていました。「軽トラ市は、たとえ遠い地域でも知り合いになり、互いに助け合う気持ちが強い。こんな団体はなかなかないと思います。」と軽トラ市の意義を話します。

舩坂さんの本業は、木工会社です。軽トラ市を始めて、輪島で被災地の様子を見たことから「軽トラでできることはないか」と考え始め、自動車のカスタマイズを手がける仲間と、荷台で足を伸ばして休める災害対策車も製作しました。この車はちょうど取材時には、被災地の熊本へ出張中。軽トラをさまざまなシーンで活用するアイデアもどんどん湧いています。

今後の課題は、もっと地元の農家が出店できる方法を模索すること。観光客はなかなか米や野菜は持ち帰りにくい。ただもっと地元の野菜や特産品を知ってほしい。その場で味わえる形も考えながら、温泉客と地元の人の双方に親しまれる市を育てていきたいと、展望を語ってくれました。

下呂軽トラ市

開催日時/3月~11月の奇数月、第4日曜日開催(7月を除く)
開催時間/10:00~15:00
会場/しらさぎ緑地公園 岐阜県下呂市幸田

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