わたしが軽自動車を選ぶ理由。

日本各地から名産品がやってきた!
「軽トラ市 in ジャパンモビリティショー2025」

2025.12.08

 2025年10月30日から11月9日まで、東京ビッグサイトで行われた「ジャパンモビリティショー」。車やバイクなどの乗り物の可能性を、存分に体感できるイベントです。ここに全国の軽トラ市が出張! 日本各地から集まった出店者と軽自動車にまつわるブースがずらりと並び、賑わいを見せました。

全国のうまいもの、いいものが大集合!
「軽トラ市 in ジャパンモビリティショー2025」

 「ジャパンモビリティショー」は、2019年まで「東京モーターショー」として親しまれてきたイベントが生まれ変わった、日本を代表するモビリティの祭典です。自動車産業の枠を超え、IT・通信・エレクトロニクス産業など多くの産業を巻き込み「豊かで夢のあるモビリティ社会の構築」を目指して開催され、なんと全日程で101万人もの来場者が訪れました。

 さて、そのジャパンモビリティショー期間中の11月8日に、「軽トラ市 in ジャパンモビリティショー2025」が開催されました。軽トラ市は、軽トラックの荷台に食料品、衣類、雑貨などの商品を陳列し販売する臨時の市のことで、現在全国150ヶ所以上で開催されています。軽トラックの荷台を販売台として使うことで、パッと移動してすぐに販売できるポータブルさと、生産者と消費者との対面販売が魅力です。今回のモビリティショーには、全国から11団体38店が出店。その中から、ユニークで魅力ある2店からお話を聞きました。

サッカー選手がつくった農作物を召し上がれ
―福島県福島駅前軽トラ市 福島ユナイテッドFC農業部

 福島ユナイテッドFC農業部は、なんと現役のJリーガーが実際に農作業に従事しながら12年間にわたり地域農業と連携したユニークな活動を展開してきました。ジャパンモビリティショーで販売したのは、選手たちが育てたシャインマスカットや精米したてのお米、各種福島銘菓、福島の郷土料理いかにんじん、喜多方ラーメンなどなど。まさに“福島代表”の趣です。
「そうなんです。私たちは普段から試合で県外に出ることも多いので、いつも“福島代表”であることを意識して活動してます。今年は、令和7年度東北農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」にも選定されました。モビリティショーへの参加も、福島のことをたくさん知ってもらいたいと出店を決めました」と話すのは、農業部に携わる荒有加里さん。

 福島ユナイテッドFC農業部が立ち上がったのは、東日本大震災後の風評被害を払拭するためでした。「福島に来ていただくとわかるのですが、多くの人が農業と地続きの生活をしています。専業でも兼業でも農業に携わっている人が普通なんです。だからこそ原発事故後、チームの存続すら危うい状態で『この街に必要とされるサッカーチームとは?』と考えた時に出た答えの一つが、農業との関わりで地域の皆さんを元気づけながらサッカーを続けることだったんです」と荒さん。

 年間約30試合近く開催する半数が県外のアウェー戦で、毎回福島のおいしいものや観光名所をアウェー戦会場でPR。すると対戦チームも地域のおいしいもので対抗するようになったのだとか。「試合の外での戦いというか交流というか(笑)。おいしい地酒や果物などで競い合うときもあり、出店を楽しみに待っていてくれるサポーターの方たちが増えてきました」。

 また選手たちが主力となって農作業にも従事しています。農業部に役職をつくり、農業部部長、次長、農作物ごとにアスパラガス課、桃課、ぶどう課、米課、ル・レクチェ課(洋梨の種類)、りんご課、研究員として、それぞれに課長として選手たちの挙手制で配属して農作業に励んでいます。

 「農家さんと一緒に、一年を通して農業と向き合っています。スポーツ選手は身体も鍛えていて運動神経もいいから、農作業も得意なのかといえば、そんなことはなくって。使う筋肉も全然違うし、低いぶどう棚での作業は腰もつらい。本当に農家の方のご苦労と努力が身にしみてわかることが多いです」。試行錯誤しながら、しかし生み出す喜びを感じることができると荒さんは話します。
「毎年いろんなことが起きます。シャインマスカットは、摘果を的確にしないとあの美しい姿にはならなくていびつな形になっちゃったり、田んぼで手植えした時に一つひとつの苗が少なすぎて、稲が実った時にスカスカになってしまったり(笑)。でも農家の方のサポートもあって、おいしいと評判なんですよ。サッカーとはまた違うオフザピッチでも活動をすることで、選手たちも多くを学んでいます。自分たちが食べているものがどうやってつくられているのかを知ることは、スポーツ選手にとってはとても重要です」。

 地元の福島駅前軽トラ市に出店する時は、スポンサーである福島ダイハツ販売株式会社が協力し、軽トラックと荷台に乗せる箱がセットになったNibako(ニバコ)を使っています。オレンジ色の特別使用車にチームフラッグや農業部のぼりを立てれば、サポーターがすぐに見つけられる賑やかな一台になります。「今日は何を持ってきたの?」「これおいしかった!」と声をかけてくれる人々とのコミュニケーションは、チームにとっての活力にもなっています。農業部の活動は、スポーツを通じて地域を元気にしながら、次世代へ農業という財産をつなぐという役割を担っています。

お客さんを喜ばせながら、自分も100%楽しむ!
―千葉県清和トラック市 まつもとフラワー

 「軽トラ市 in ジャパンモビリティショー」でひときわ明るい一画がありました。千葉県君津市の清和トラック市のまつもとフラワーです。代表の松本有莉さんが出品していたのは、小松菜やチンゲン菜などの葉物野菜やカブ、自然薯など、清和地区の生産者仲間6名がつくった農作物です。
 「モビリティショーでの売れ筋が、地元とはまったく違うことが学びでした。人気だったのは、ローリエなどのハーブ類や唐辛子。カバンに入れられるサイズのものがよく売れました。お米も5kg、3kg、2kgと準備しましたが、売れたのは2kgのもの。みんな電車で来るから、重たいものは売れないんですね」と松本さん。
 出店したのは、清和で行っているトラック市への刺激が欲しかったから。「みんなどんなふうに工夫をしているのか、知りたくて参加しました。基本は私たちがやっているトラック市と似ているなと思いました。農作物以外に、雑貨とかキッチンカーがあるとか。勉強になることもいっぱいありました」。

 松本さんは、3年前にわずか3台から清和トラック市をスタート。現在、年5回開催中で、直近では25台の出店があるほど人気を呼んでいます。松本さんは、運営者でありながら出店者でもあり、日々てんてこまいだと話します。「よくばりなんだと思います。こういうイベントがあったらいいなと思うからやりたいし、対面販売が好きだから、ついついどっちもやってしまう」と言いつつ、楽しそうです。

「みんなが喜んでくれるとうれしい!」という松本さんのマインドは、清和トラック市の運営に表れています。地元消防団による消防車乗車体験や、ダイハツ千葉販売との連携による整備士体験など多彩なコンテンツを準備したり、狩猟免許を持つ松本さんと娘さんが、捕獲したシカやイノシシのジビエ料理を提供するブースを出したり。周りの人々も松本さんのパワーに巻き込まれつつ、トラック市を楽しんでいます。「たぶん私が危なっかしくみえるから、みんな手伝ってくれているんじゃないですか」と笑います。

 そんな松本さんは、現在2台の軽トラックを使いこなしています。一台は花栽培の仕事用で「さくらもち号」としてかわいく装飾し、イベントや配達に活用しています。ビジュアルで覚えられていて、よく声を掛けられるそう。もう一台は狩猟用。罠を運び、もちろん捕獲したイノシシやシカを載せるのにも使っています。
 「ホンダのアクティに乗っていて、乗り心地もいいし空間が広くて快適です。山に入るので、4WD・マニュアルが必須です。パワーもあるしお気に入りです」と愛車について語ります。

 これからどんなトラック市にしていきたいですか?と尋ねると、アイデアが次々に出てきます。「やりたいことはいろいろあるんです。いつか軽トラを全色並べたカラフルな軽トラ市なんてステキじゃないですか? 自分好みの軽トラが見つかったら、その場で注文できたらうれしい。あと軽トラでパレードするのもいいなと思っています。友人が結婚したので、提案したら断られちゃった(笑)」。

 松本さんや清和地区の住民にとって、清和トラック市は、単なるモノを売り買いする場所だけではなくなってきているようです。
 「リピーターも多くて、初回から来てくれているおじいちゃんが、毎回挨拶に来てくれるんですよ。杖をついて足元がおぼつかない感じだけど、『俺はこのトラック市が楽しみなんだ』って必ず話しに来てくれます。最近は小学生が学校の課題で取材に来てくれました。『僕もこの清和トラック市をみんなに広げたい』と言ってくれたので、『いいよ!私のあとを継いでくれ!』という頼もしい気持ちになりました」。
 人と人、世代と世代をつなぎ直す場となっている清和トラック市。多くの軽トラ市が目指す、地域を温かくするという役割を、自然と果たしているようです。

 「軽トラ市 in ジャパンモビリティショー2025」に集まった全国のブースには、きっとこの2店のような様々なストーリーが詰まっているはずです。福島ユナイテッドFC農業部のように地域愛を発信するチームがいたり、清和トラック市のように人とのつながりを再構築していたり。軽トラックという身近なモビリティが、地域経済の活性化や人々の交流を生み出す重要なツールとなっていることを、改めて確認することができました。